仙台高等裁判所 昭和28年(う)23号 判決
(イ) ……しかし判決に示すべき証拠の標目は、その挙示した証拠から犯罪事実を認定することが実験則に照らして合理的であれば足りるのであつて、どの証拠の、どの部分を証拠としたかというが如きは必ずしも説明の要はない。しかも所論指摘の証拠のみによつては判示事実全部の認定が困難であつても、原判決挙示の証拠を綜合すれば、原判示第四の事実は容易に肯認し得られるのであるから、原判決には理由にくいちがいの違法があるとは認められない。
(ロ) ……しかしながら或る者の公判廷に於ける供述と検察官に対する供述とが異なる場合に、その孰れを証拠として採用するかは事実承審官たる原審の自由裁量に委ねられるところであつて、本件に於いて原判決が……の検察官に対する各供述調書の記載を証拠として採用したのは、これらの者の公判廷に於ける供述よりも、その前の供述を信用すべき特別の情況の存するものと認めたがために外ならない。……従つてかかる証拠をこれらの者の公判廷に於ける供述よりも信用すべき特別の情況が存するものと認めた上、証拠として採用したからとて特に採用した理由を判示しなければならないものではない。